江戸呑み……山の上本店(神田駿河台)

■江戸東京…敬意を表する先輩同輩が営む名店

■山の上本店(神田駿河台)


靖国通り駿河台下の交差点から駿河台・御茶ノ水駅方面へ登り明治大学駿河台キャンパスの脇を左に折れれば昭和十二年築の洋館「ヒルトップ・山の上ホテル」。その山の上ホテル本館一階に天ぷらと和食「山の上」御茶ノ水本店。この日は日曜日ということに加え深夜発のフライトで移動しなければならず、日曜の午後3時半という中途半端な時間の予約を受けていただき感謝。少し早い3時ちょい過ぎに到着するも、まだランチからの客が数組残っている模様。用意ができたら呼んでくれと伝えホテルのロビーで待つ。10分ほどで呼ばれ店内に案内される。先ほどの先客は全て帰り店内に客は私一人、カウンターの右端、今は亡き池波正太郎先生の定席に通される。若い衆は休憩に入ったのかカウンター内には島貫料理長ひとり。季節のおまかせ天ぷらを注文、酒は鄙願の大吟醸をもらう。先付けにはこの店の定番のじゃこ梅と吸いとろの中に莫久来を入れたもの。お造りは本鮪の赤身と真子鰈。どれも旨い。

天ぷらは車海老から。生粋の江戸前に比べ胡麻油の香りが強くなく、衣も白く薄く上品な仕上がり。素材の味わいを存分に楽しめる天ぷらだ。銀杏・舞茸・キス・椎茸と続く。どれも旨い、酒の替わりをもらう。この後に関東では珍しい鱧。関西割烹や河豚屋などでは鱧の造りを扱っているが、江戸前天ぷらのネタとしてはあまり見かけない。鱧ということでお造り同様梅肉のソースが用意されたが、酒呑み的には塩でも充分旨いと感じる。この後ハス・グリーンアスパラ・穴子と続きコースの天ぷらが出揃う。もう一度酒の替わりをもらいコースになかった白嶺茸と栗の天ぷらを注文する。白嶺茸は陸の鮑と呼ばれ珍重されるキノコで独特の歯ごたえと上品な香りが美味。栗は渋皮ごと天ぷらにされておりその食感に最初驚いたが、こういうものだと割り切ってしまえばホクホク甘い旬の味わいがまた楽しい。

ここまで食べて腹八分目、かき揚げの天丼と赤出汁も魅力的だが今日は天茶にしてもらう。海老と貝柱・三つ葉のかき揚げ茶漬けは薄めの出汁で量も多くなく、山葵と海苔でさっぱり食べられた。食後のデザートにはピオーネのシロップ漬け。ご馳走様でした。日曜のまだ明るい時間から由緒正しき山の上の池波正太郎先生の定席に座り、大吟醸酒を呑み料理長がマンツーマンで揚げた天ぷらをいただく…日本滞在最終日、山の上本店で至福のひとときを過ごした。


■山の上本店


東京都千代田区神田駿河台1-1

山の上ホテル本館1F

03-3293-2831