江戸呑み……山田屋(王子)

■江戸東京…敬意を表する先輩同輩が営む名店

■山田屋(王子)

 

この日は朝から小雪が舞う寒い日であったが、午後から上野鈴本演芸場で寄席を楽しんだ後、今日高座があった落語の古今亭志ん輔師匠と漫才の昭和こいる師匠に誘われ王子で一杯やることになっていた。店はこいる師匠行きつけの大衆酒場、創業80年になるという山田屋。ちなみにこいる師匠は住まいが王子で、以前には王子でスナックを経営していた時期もあったという。志ん輔師匠の高座が終わる時間に両師匠、上野の呉服店の二谷さんと鈴本の一階で待ち合わせ、御徒町から京浜東北線に乗り王子で降り皆でだらだらと歩くと程なく山田屋に到着、店前では席取りをしてくれていた入船亭扇治師匠が出迎えてくれた。

 店内右奥の大きなテーブルに皿やグラスがセットされている。まずはキリンラガーで乾杯、適当につまみを頼む。烏賊刺し・マグロ刺し・コハダ酢・イクラおろし・イクラの粕漬け・ハムカツ・牡蠣フライ・サツマイモ天ぷら・モツ煮込み・生揚げなど・・・・。すべて二人前ずつというような頼み方。ビールを2~3本飲み干すと、こいる師匠の焼酎ボトル「いいちこ」が運ばれる。それはいかにも芸人さんのボトルといった感じでイラストなどが描かれている。焼酎派と日本酒派に別れ私は秋田の酒「八重洲」を熱燗をいただくことに。旨い。

 つまみはどれも昭和の良き時代の酒場のそれといった趣、特にサツマイモの天ぷらなどはまさにお袋の惣菜といった感じで良い。烏賊の刺身は真っ白な皿に大根のツマを敷きその上に大葉をあしらわずにそのまま並べられている。白一色であるガゆえ師匠の「境目がわからないなあ」の言葉に一同爆笑したが実際食べる分にはさほど支障はない。八重寿の燗を2~3本やったところで壁に「越後で候」の張り紙を発見、早速注文する。越後で候は新潟の酒「八海山」の冬季限定しぼりたて生原酒で、数量に限りがあるため珍重されている。冷酒グラスになみなみと注がれ提供される。旨い。しばらくの間旨い酒と師匠方の楽しいお話を存分に楽しんだが、楽しい時間というのはあっという間、入店したのが4時半で現在時刻が6時過ぎなので、この店に来てもう2時間が経とうとしている。

 2次会に近所のスナックに行くというが私は所要があるためここで失礼することにした。創業80年の老舗大衆酒場で昭和の演芸を担ってきた師匠たちと酒をご一緒させていただいた。想い出に残る一日であった。


■山田屋

 

東京都北区王子1丁目19–6

03−3911−2652